古くは、7世紀の班田収授の法に遡ると言われる日本の地籍に関する制度は、明治維新以降、幾多の変遷を経て、今日では、不動産登記法によって体系化された制度として定着し、不動産にかかる権利の保全・利用・取引・流通・管理にとって最も重要な制度のひとつとして評価を得ています。
私たちの暮らしに不可欠な土地の毎筆の現状を正確に把握し、これを公示する制度は、それぞれの国の成り立ちや社会の発展過程と、密接に関係して形づくられてきたものであり、法秩序の安定とこの制度を利用するすべての人々の信頼を得て、はじめて有効に機能する仕組みであると言えるのではないでしょうか。
私たちの生活する社会は、世界的な規模で繰り広げられている金融・経済活動と連動した高度に情報化が進んだ、絶えず変化する社会であり、あらゆる分野において、従来の仕組みを固定化してとらえることなく、将来にわたり、多くの市民にとって有効で利用しやすい仕組みはどうあるべきかを追い求める必要があると考えるに至りました。
地籍に関する研究に取り組むに当たっては、登記制度、登記実務、測量技術のみならず、土地法制や歴史・文化、生活環境、都市計画、農業・林業、不動産取引等、多岐にまたがる分野についての識見が必要となりますが、残念ながら、地籍を体系的に研究する分野については、その研究環境が整っているとはいえず、その研究成果も多いとはいえない状況にあります。
他方では、この分野に関係する人々が、学域・業域の枠組みを越えて、地籍に関する実務者とも連携ができる研究会を待ち望む声も数多く届いています。
このことを踏まえ、地籍に関する制度及びその環境の充実発展に資することを目的として「地籍問題」に関する調査・研究・情報発信の拠点として「地籍問題研究会」を発足させるものであります。
2010年10月
地籍問題研究会発起人一同